2015年02月27日

ブラジルに行こうと心に決めた

ブラジルの植物

「お子さん云々は、ともかく、それだけ現地でサッカーに接していたいんだね」
「まぁ、雅之さんも、若い頃サッカーの選手だったしね、でも、だったら、サッカー関係の仕事に就けばいいのに、好きなチームとか強要されるのが嫌なんですって」
「わかるな、そういうこだわり。それに、思い立ったら吉日、なんだよ」
他人事のように言うミサコに、トモエは憤然とする。
「ミサコが、独立したときだって、みんなびっくりしたよ。まぁ、私たちみたいに
夫婦で海外行っちゃうわけじゃないけど、一人なだけに、もっと勇気がいったんじゃいかって」
「それこそ、思い立ったら、よ。いつまでも同じことしていても何も前に進まない」
「やだー、雅之さんと同じこと言ってる」
トモエは大笑いしたあと、ちょっと考えて言う。
「雅之さんは雅之さんの夢があるじゃん。で、今、OLしている私にも夢がある。それは海外でのほうがかえって有利だったりする」
ミサコはトモエの夢を思い出す。そういえば、昔聞いたことがあるような。
「ああ、着物だ! トモエのお母さん、着物の先生で、トモエもいつかはやりたいって言っていたよね?」
トモエはうれしそうにうなずく。
「日本では着物離れが進んでいるから、海外のほうが有利かな、と。しかもブラジル人は親日的だし。そうなると、日本人にあこがれた着物ブラジル人が黒のカラコンを欲しがるかもしれない、と思って、ソロティカ社で聞いたら、黒は置いてないって。これってビジネス・チャンスじゃない?」

二人は目を輝かす。
「すごいじゃん、トモエ!」
「私は雅之さんの夢を拾って、できることをミサコにつなぐだけだよ」

二人はその日、お互いの将来について語りあった。ミサコはいつか、トモエのいるブラジルに行こうと心に決めた。  

Posted by 弘せりえ at 14:35Comments(0)短編

2015年02月23日

子供作ってサッカー習わすんだって

サッカー

「ただねー、お店の人にも言われたけど、色が日本人にはあまり似合わないかもって。これはアクアブルーなんだけど、あとはゴールドとかクリアパープルで、ハーフカラコンというよりは、ほぼ白人カラコンだったわ」
そういううわさも聞いているので、日本の大手代理店は輸入に着手しないのだとも聞いていた。
「ハーフの子が、ホントに外人顔になりたいときにはいいみたいだけど、日本ではまだまだ需要がないのよね」
ミサコはつぶやきながら、トモエからカラコンのパッケージを受け取る。
先日、店に訪れたドイツ人のハーフの子の瞳に近い色である。それを黒のワンデーアキュビューディファインで隠したがるハーフもいるのになぁ、と不思議に思う。
「モデルのダレノガレ明美だっけ、ブラジル人のハーフ。あの子とか、ばっちり似合いそうだね」
トモエの言葉に、ミサコは微笑む。
「トモエ、よく知ってるじゃん」
そう言われて、トモエは、ちょっと緊張した面持ちになる。
「ブラジルに関しては結構調べたの。・・・実はね、今回のブラジル旅行ね、雅之さんの一大決心もあってのことなのよ」
雅之は、現在、アジアの外資系の会社に勤めるサラリーマンである。ミサコはちょっと考えた。
「・・・まさか、雅之さん、ブラジル系企業に転職するとか?」
「当ったり~!」
トモエは、陽気に笑う。
「え?じゃあ、ブラジルに行っちゃうの?」
「さぁ、しばらくは日本にいるだろうけど、日本はあくまで支店だからね。それに現地採用の雅之さんなら、本社がブラジルだから、いつ転勤になるかわかんない。笑っちゃうでしょ、サッカー好きが昂じて、ブラジル企業を探していたら、コーヒー関係の企業が見つかって、転職するんですって。で、ブラジル赴任が決まったら、夫婦で引っ越して、さっそく子供作ってサッカー習わすんだって」
あまりにも子供じみた夢で、ミサコは失笑してしまう。  

Posted by 弘せりえ at 14:25Comments(0)短編

2015年02月20日

ブラジル人は食べ物を直接手で触れない

ポテト

「イグアスはねー、ナイアガラほど観光地化されてなかったけど、その分、野生的で、私の中では世界一かな」
世界一といっても、世界に名だたる滝はそうそうないので、「ふーん」とミサコは相槌を打つ。
「それでね、地方によっては違うのかもしれないけど、おもしろいこと発見しちゃった」
トモエのいう面白いことは、たいてい日常的な驚きである。
「ガイドの隅にも書いてあったけど、ブラジル人って、食べ物を直接手で触れないんだって」
それほど珍しいことでもないので、ミサコは再び、「ふーん」と言う。
「それが、マクドナルドでもよ!みんなポテトをナプキンで掴んで口まで持っていくの」
「ナプキン、油っぽくなってポテトにひっつくんじゃない?」
「それがさぁ、ブラジルのレストランとかにあるナプキンは、かったいプラスチックみたいな紙の。最初、あれで口をぬぐったら、痛いわ~と思っていたら、物をつかむようのナプキンだって、後からわかって納得したわ」
トモエの話は楽しかったけど、これといって実のあるものでもないなぁ、とミサコが思い始めたころ。
「失礼ね、ミサコ、退屈です~って顔に書いてあるよ」
さすが、昔からの友達は鋭い。
「いやいや、そんなことないってば」
言いわけするミサコをよそに、トモエはバッグから、何か取り出す。
「これ、ミサコは興味あるだろうな、と思って買ってきた」
トモエが取り出したのはブラジルのカラコンを扱う会社、ソロティカ社のものだった。
ミサコはびっくりする。なぜなら、世界一美しいと言われているカラコンだからだ。
「もう、ミサコの店にあったら残念だけど・・・」
ミサコは店では、代理店を通してしかカラコンを取り寄せてなく、直接海外から輸入してはいないので、驚く。いつか、ネットで個人的に買ってみようと思いつつ、日々の忙しさで忘れていたのだ。  

Posted by 弘せりえ at 02:15Comments(0)短編

2015年02月17日

高校の時の同級生に会った

イグアスの滝

ミサコは、先日、夫婦でブラジル旅行に行ってきた、高校の時の同級生に会った。
「なんで急にブラジルだったの?」
という質問に、速攻、トモエは答えた。
「私がイグアスの滝を見たかったから」
トモエは滝好きで、ナイアガラの滝に行ったときも大はしゃぎしていた。あれは、お互い
社会人になる前の寒い頃だった。カナダ側からもアメリカ側からも見たが、とにかく
寒過ぎて、ぶるぶる震えてお互いに記念写真を取り合ったものだ。
「ミサコは、どうせ、私が世界遺産的な滝が好きだから、と思っているでしょ?」
その通りだったので、ミサコはうなずく。
「それもあるけど、今回は違うの。『ブエノスアイレス』って、ちょっと前の香港映画みて
イグアスの滝がどうしても見たくなったの」
ミサコは、首をかしげる。
「香港映画で、イグアスの滝? それにブエノスアイレスって、アルゼンチンじゃない?」
トモエは、ミサコの的を得た指摘に満足そうに笑う。
「ま、映画見てないならわかんないだろうから、香港映画であることは置いといて。とりあえずイグアスの滝はブラジルとアルゼンチンをまたいでいるんだ」
「ああ」
ミサコは納得した。トモエの旦那さんは、サッカーが大好きなのである。
トモエは、ミサコの様子にうなずく。
「で、折衷案よ。イグアスが見られて、雅之さんの好きなサッカーも見られる」
なるほど、そういう手もなるのか、とミサコは内心感心する。
「で、イグアスはどうだった?」
「サイコーだった。サッカーの国内試合と重なって、雅之さんはそっち観にいったから、
独身みたいに一人車旅!」
「え?でも結構かかるでしょ?」
「日帰りはキツかったから、1泊した」
夫婦で旅行に行きながら、行動が別々という個人主義のトモエ夫妻が、ミサコは好きだった。  

Posted by 弘せりえ at 14:06Comments(0)短編